茨城症候群

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arrogance

  • 2008年4月21日 03:19

ひゃっ!人間か?あんたは、人間か?なんだい、そんな物騒な格好して、俺を殺そうって言うのかい?……やめておくれ!殺さないでおくれ!殺す前に、話を聞いておくれ!頼む、頼むよ!

そう、そうそうそう、解ってくれればいいんだ。取り敢えずさ、そのおっかない鉄砲を後ろへ置いてくれないかな。俺、嫌なんだよね。鉄砲を見るのって。

まあ、あんたは俺を殺さないで話を聞いてくれると言うから信じるけど、俺ね、あんたら人間に殺された仲間をウン十羽も見てきたわけだ。その鈍く輝いた鉄砲でね、パーンと撃たれちゃってね、ぴくりとも動かなくなっちまうんだぜ。ああ恐ろしい恐ろしい。俺は鉄砲で撃たれる夢を見るほど、あんたらに殺されるのが怖いんだよ。

でもまあいい。俺は目の前にいるあんたを信じるよ。ほら、一期一会って言うじゃないか。ウサギの俺と人間のあんた、ここでばったりと会ったのも何かの運命だろう。もしかすると、俺はあんたのご先祖様の生まれ変わりかも知れないよ。無駄な殺生はやめろ、ってご先祖様が俺に生まれ変わって、あんたに警告しに来たんだ。きっとそうに違いないよ。絶対そうだ。

しかしまあ、人間ってのも厄介な生き物だよな。何もさ、あんな鉄の玉をびゅーんと飛ばして俺たちを殺さなくてもいいのにさ。あれ、撃たれる方の痛みを知ってる?知らないよね。人間は撃つ側なんだから。まあ俺も撃たれたことがないから知らないんだけど。

撃たれた仲間は、息絶える間際にこう言っていたんだ。「ああ、痛い、痛い、痛いよ、母ちゃん」って。か細い声でね。大きな声も出せないほど痛い、だけどその小さな声で痛みを伝えているんだ。どれほど痛いかってのが解るだろう?そいつは痛い痛いと言いながら、死んでいったんだ。痛かったろうねえ、痛かったろうねえ……。でも弔う間もないよ。人間は撃ったウサギを取りに来るんだ。ざっざっ、と人間が近付いてくるから、俺たちも撃たれるかも知れない、だから逃げなきゃならないんだ。でも死んだ仲間を振り返っちゃだめだ。必死で俺たちは逃げなきゃならない。

……ねえ、俺たちウサギって美味しいのか?いや美味しいとかどうとか言う以前に、俺たちを食べないと、あんたら人間てのは生きていけないのか?違うだろう?俺、前に人間の村へ迷い込んだことがあるんだけどさ、豚やら牛やら魚やら食べてたじゃん。美味そうに。だからさ、何も俺たちを食べないでもいいと思うんだよね。

あのね、この山のウサギの数、どんどん減ってるんだよ。あんたらは知らないだろうけどさ。まあ知らないからどんどん狩りをするんだろうね。あのさ、俺たちが一年で何羽増えると思ってるの?ゾウリムシじゃないんだから、細胞分裂するわけがないじゃない。人間と同じように交尾してね、一ヶ月かそこらで子供を産むんだよ。十羽くらい産まれるんだけどさ、半分くらいすぐに死んじゃうわけ。丈夫に育つのは二、三羽だ。まあだいたいこの山全体だと、一年で数百羽くらい産まれるんだろうね。それをさ、人間は一日に十羽狩ってるんだぜ?どう考えたって、俺たち減っちゃうじゃん。

だからね、俺が言いたいのは、ウサギ狩りはもう止めてくれないかな、ってこと。ほら、いい機会だろう?俺はあんたのご先祖様の生まれ変わり。運命的な出会いだ。あんたも俺の話を聞いてくれた、分別のある人間だ。それなら、これ以上言わなくても解ってくれるだろう?

ん?なに、商売だって?商売だから仕方がない?……商売って何なのさ?俺たちウサギがこの山からいなくなってもいいのか?そんなに商売ってものは大切なものなのか?まあさ、商売ってものがいかに大切だとしてもだよ、俺たちがいなくなったらどうするんだい?あんたらの食べるものがなくなっちゃうだろ?

ん?なに、ウサギがいなくなっても牛や豚や魚を食べるって?……おい、そりゃどういうことだよ。じゃあ初めっからウサギ狩りなんてよせばいいんだよ。何で俺たちを食べるの。俺たちじゃなくてもいいなら食べなきゃいいじゃないか。やめて、俺たちを食べるのやめておくれよ。

お、おい、ちょっと、冗談だろう?俺に鉄砲なんか向けちゃって。え?これも商売だって?……何なんだよ!商売って何なんだよ!商売、商売って


「大将、今日はでかいウサギが獲れましたぜ」

「ほう、こりゃ目出度え!きっといい金になるぜ、こいつぁ」

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