茨城症候群

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手伝いサンタ2

  • 2007年12月23日 21:15
  • UFO

手伝いサンタ

住人Aの証言

朝早く、ばんばんと玄関の扉を叩く音がしたので、何事かと思って恐る恐る見に行ってみると、見ず知らずの女の子が戸口に立っていたんです。高校生くらいの可愛らしい女の子でした。

それがねえ、おかしな格好をしていたんですよ。おかしな格好、そう、サンタさんのね。真っ赤な帽子、真っ赤な服、真っ赤なブーツ。白い髭以外はまるっきりサンタさんに成り切っていました。この近くでコスプレ大会があるわけでもないし、一体何なのだろうと思いましたね。こんな格好で、朝早くから人の家の扉をばんばんと叩くなんて。普通じゃ考えられませんよ。強盗かと思ったくらいでしたもの。

その女の子は、泣いていました。目を赤く腫らして、ぽたぽたと涙を流して、泣いていたんですよ。私はどうしたのかと思って、話を聞いてみたんです。そうしたら、弱々しい声で言ったんです。「おじいちゃんが、いない、いないんです」って。でもね、知りませんよ、あなたのおじいちゃんなんて。大体あなたのことすら私は知らないんですから、うちに来ても何も分かりませんよって。そんなことは言いませんでしたけどね。取りあえず、警察へ行ってそのおじいさんが保護されていないか聞いてみたら、と言って帰しました。

まあいい迷惑でしたね。その女の子には悪いですけど。私だってね、暇じゃないんです。この年末で色々忙しいのに、朝っぱらから誰だか分からない人の相談なんて受けるなんて冗談じゃありませんよ。本当に迷惑ですね。

警察官Bの証言

僕はちょうど交番の宿直勤務明けの朝で、近くで買った弁当を食べていました。唐揚げ弁当です。おいしいんですよ。僕、唐揚げ大好きなんです。朝から脂っこいものを食べるのを避ける人は多そうですが、僕はそんなの構いません。脂っこくても、あのカリカリの唐揚げが好きなんですから。それにね、安いんですよ。ほかほかの白いご飯と唐揚げ5つが入っていて、410円。安いでしょ?もう明けの日はいつも唐揚げ弁当を食べています。あの弁当屋がなくなったら、僕、どうしようかと思いますね。コンビニの唐揚げ弁当なんて嫌ですよ。値段は高いし、唐揚げはかさかさだし。食べる気にもなりませんね。だから僕、あの弁当屋が潰れちゃったら異動願いを出そうと思ってるんです。本署でも色々やってみたいですからね。

ああ、そうですね、女の子のことですか。そう、僕は唐揚げ弁当を食べていたんです。おいしい唐揚げ弁当です。本当は休憩室で食べるのが決まりなんですけど、何せもう一人の当番の田中君がちょうど外へ出て行っていましてね、奥に入っちゃうとまた警官がいないとか何とか言われちゃうんで、表で食べていました。田中君は中年のおばさん同士が争っているとか何とかで、現場に行ってしまってたんです。年も暮れだから、何かと物騒なんですよ。この前なんか、年老いたおじいさんが屈強な黒スーツの男と殴り合い寸前の口喧嘩をしていましたからね。大体そういうのはお金の問題なんです。お金っていうのは、本当に怖いものですよ。軽い気持ちでお金の貸し借りはしちゃダメですよ。お金の貸し借りは、命懸けなんです。

ああ、そうそう、女の子ですね。交番内のデスクで僕は唐揚げ弁当を食べていたんです。3つ目、いえ4つ目の唐揚げを口に入れた時でしたね。ぬっ、と、赤い影が視界に入ったんです。ぬっ、とです。はっとして顔を上げると、そこには女の子がいました。イベントコンパニオンかなんかだったんでしょうかね、真っ赤なサンタクロースの格好をしていたんです。可愛らしい格好でしたよ。でも女の子は、その可愛らしさとは不相応な、悲しげな顔をしていました。それを見て、僕は直感的に思いましたね。ああ、これだけ可愛いんだから、変な男に追い回されたり悪戯されたんだろうな、って。全くおかしな世の中ですからね、何があっても不思議じゃありません。事情を聞こうと、僕はその女の子を暖かい交番の中へ入れました。

まあいつも僕の直感は当てになりませんからね。その女の子が泣いていた原因というのが、何でも朝起きたらおじいさんがいなくなっていたということなんです。待っていても帰って来ない、家中探してもいない、近所を探してもいない、何処を探してもいない、それでここに来たと言うんです。朝散歩の趣味があったかと問うと、それはない、痴呆の気があったかと問うと、それもない、結局突然いなくなってしまったということらしいんですね。それじゃ何処かでそのおじいさんが保護されてはないかと、おじいさんの名前と特徴を聞いてから電話で本署に照会してみました。身長180cm前後、やや肥満、白髪、白いあご髭、高齢男性。該当者はなしとの回答でした。それを女の子に告げると、可哀想に、顔を真っ赤にしておんおんと声を上げて泣いてしまいました。

でも何処にもいないというんですから、仕方がありませんよね。取りあえず捜索願を出すかと聞くと、必要書類がないので出せないと言います。まあそうでしょう。突然おじいさんがいなくなっておろおろしている時に、書類を用意する余裕もありませんよね。ひとまずこの案件は交番で預かっておき、また書類を揃えてから改めて来て頂くことになりました。

帰り際、女の子は泣くのを止めて小さな声で「お世話になりました」と声を掛けてくれました。まあまだ未成年だというのに、しっかりしているなと思いましたね。早くおじいさんが見つかってくれればいいんですけどねえ。僕は一息ついた後、また唐揚げ弁当を食べ始めました。唐揚げも白いご飯も、すっかり冷めていました。うん、まあ仕方がないです。

コンビニ店員Cの証言

俺、フリーターなんすよ。悪いっすか?年金とか知んません。貰えるまで生きてるなんて限んねえし。遺族年金?俺ずっと独身でいるつもりだし。俺が払うってんなら、俺がその返しを享受しなきゃ意味がないんすよ。死んじゃったら貰えないっすよね?貰えないものを払うよりも、払わない方が得じゃん?だいたい月に一万いくらも払うなんてさ、やってらんねえんだよ。一万あったら一週間生活できるんすよ?未来を憂うより今を憂わなきゃあね。あ?間違ってるって?うるせえな、文句は社会保険庁に言えよ。

で、何?女の子?…俺さあ、いちいちお客さんのことなんて覚えてないんすよ。あんた、コンビニに一日何百人来ると思ってんの?俺朝から晩まで働いてんだけど、その間三百人は来るよ?三百人。覚えられると思ってんの?あんた、コンビニとか接客業で働いたことないでしょ?あんたは俺を舐めてんだよ。どうせフリーターだからって思ってんだろ?舐め腐りやがって。クソうぜえよ。消えろ。早く消えろ!

コンビニ店員Dの証言

変わった女の子ですか?ええ、確かにうちに来ましたよ。近くの子供会のクリスマスパーティで着るんだと思いますが、サンタの格好をしていましたね。その明るい格好に似合わない、何か妙に暗い顔して、とぼとぼと店内へ入って来ました。

何を買って行ったか?…これ言っちゃっていいんですかね?一応、お客様の購入された内容については守秘義務が課せられているんですが…、まあ人捜しじゃ仕方ないですもんね。ここだけの話にしておいて下さいよ。確か、リンゴジュースと唐揚げ弁当の二点を買って行きました。珍しく二千円札を出したお客様なのでよく覚えています。入ってきた時と同じように、重たそうな足取りで出て行かれました。まあ、色々なお客様がいますからね。気にしていたらキリがありません。

さ、これでいいですか?もうすぐ休憩が終わってしまうので、仕事に戻らないといけないんです。それで、あなたはその女の子のお知り合い?

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