茨城症候群
捨て猫2
- 2007年10月15日 20:22
- UFO

妹の言うように、この野良猫がヤマモトという人間だったということを信じようが信じまいが、俺の部屋の居候として飼うことが無理なことは明白だった。だが、再び捨てるわけにもいかない。もうこの部屋へ連れられて来た時点で、この猫の行く先は決まっていたのだろう。
保健所。市の保健所に収容してもらうしかない。収容された後、この猫がどうなるかなんて分からない。俺は分からない。もちろん保健所では収容された後にどのように扱われるかは知っている。収容されているうちに、新しい飼い主に選ばれることがあるということも知っている。けれどもそれは、ほんの一部の幸運な動物だけなのだ。すなわち、その他大部分の動物たちは、どうなるか。それは誰もが知っている。知ってはいても、俺はこの目の前に猫がどうなるかなんて、分かりたくない。
愚かな妹はまだ猫じゃらしで猫と戯れていた。こちらの気持ちも考えもせずに、まあよく楽しげに笑っていられるものだ。きっと妹の頭の中では、この猫はもう俺の部屋の住人になっているのだろう。ヤマモトさん、ヤマモトさんと呼び掛ける妹の幸せな笑顔が、なんだかとても憎らしく思えてくるほどだった。
妹が帰り支度を始めて、俺はこの猫を一晩しか預かれないことを言った。妹は訳が分からないと言いたげな顔をしていたが、沈黙のうちにこちらの言いたいことを理解した様子で、それはダメだと言い寄ってきた。ヤマモトさんは人間なの、いつか人間に戻れるから、と相変わらず頭がお花畑なことを言い続けている。しまいに俺は怒った。
無言のまま妹は帰って行った。部屋にはこの可哀想な猫を置いて。兄の俺には愛想を尽かしたようだ。信じようのない話をし続けた妹は、どこかおかしくなってしまっていたのだろうか。俺は妹が心配になった。
さて、この猫、今晩は段ボールの中にでも入れて、明日、連れて行こう。